2009年08月07日

デジタルハリウッド大学 杉山知之学長 3

デジタルハリウッド大学 杉山知之
―今後のヴィジョンや、学生たち若い世代に求めるものはなんでしょうか。

日本の若い人たちにある圧倒的なアドバンテージっていうのは世界からみれば、育ちがすごく恵まれてる事なんですよ。
生まれた時から、マンガやゲーム、ファッションといったありとあらゆる文化的なものに恵まれています。こういったものは一見するとサブカルチャーと言われて、良いものと思われないことが多いのですが、実は21世紀の今現在において
は、サブカルチャーと言われてきたものがメインカルチャーなんだっていう事がわかってきているんです。
ファッションにおいてもヨーロッパの人に影響を与えているし、オタクって言ってもずい分メインな話なんだと思います。
要するに、(こういった文化の)本場にいるわけです。

開国以来、日本の大人がお手本にしてきたのはアメリカ、ヨーロッパでした。
それが20世紀を越えて以降、ありとあらゆる点で追い越してしまっていた。
そういった部分で、日本人には目標が無くなってきていると思います。ということは、自分達がビジョンを作らなければならない。自分達がこうあるべきだって言ってそこに進まなければならな立場にあるわけです。
それで、その立場へ自然となっていったのがマンガ、アニメ、ゲームなんですよね。その思いに賛同する人が世界中にいるのです。
その「憧れられている」のが、日本の「新しい立ち位置」なんですよね。
今や世界から注目されているマンガやアニメの本場にいるというのは凄いことなんです。
だからその環境をアドバンテージとしてグローバルに展開して欲しいっていうのがこの学校の想いでもあるし、僕の想いなんです。
マーケットは確かに日本だけで考えると小さいですが、世界の人口は年々増えています。だから、まさにそういった環境で学んでいるデジタルハリウッド大学の学生のファンになっていいはずの人達が世界中から出てくるかもしれない。
学生には、自分達は世界から注目されているコンテンツの本場にいて、ここで何かクリエイティブな事、それは、マンガ、アニメ、ゲームに限らず、ものづくり、自動車、建築デザイン……何でもいい。何か、まねではなく、自分達が世界を意識して海外でも受け入れて貰えるよう作品を作ってもらいたい、そういう流れになって欲しいと思っています。

その理由は、海外の目が今、日本に向いてるからです。
これは、こちらから向かせてるわけじゃなく、海外から向いてくれているんです。
向いてくれている時に、何か良い物を出せば、受入れてもらえます。
これまで、国を動かしてきた年代層にはその感覚が少ないのではないかと思うんです。
かと言って、あまりにも強力に進んでしまうと軽薄なものに夢中になってるのではないかと思われるかもしれない。しかし、2050年で90億人まで膨れていく人類が全員、真面目な教養を身につけて日々暮らしていくのかといえばそうでもなくて、やっぱり目の前の楽しさ、エンタテインメントという流れの中で、仕事をしたり生活していくことを考えると十分意味がある事だと思います。
そういう意味では、日本人にはすごいアドバンテージがあるのです。


―海外といえば、デジタルハリウッド大学は留学生が多いそうですね。

現在はアジアからの留学生が多いのですが、これからはヨーロッパ圏の留学生も増やしていき、今後は学生の半分は留学生にしたいと思ってます。
大学3、4年生が履修する授業の一部は、英語のみでおこなう授業がいくつかあるんですが、その教室にいろんな国の学生が学んでいるようにしたいんですよね。

―なぜ日本がマンガ、アニメ、ゲームの本場になったのでしょうか。

これは偶然だと思うのですが、第二次世界大戦に負けたおかげで、日本にはタブーがないんです。戦時中にアメリカによってそれまでの日本の倫理観を完璧に否定されたんですよね。
アメリカ人は、キリスト教的な世界観とか倫理観が幼少の頃から植えつけられてるから、すごく当り前の価値基準になってるわけです。例えば物事は善悪できちっと分けるようにするみたいに、本人達も意識しないうちにその倫理観に添ってしまうんです。
その反面、敗戦後の日本は、憲法は憲法学者たちが作ってくれたのですが、社会的規範というものはなかったんですよね。
その結果日本人がどうなったかと言うと、表現者から言えばタブーがなく、好きなものが作れるという状況になったんです。
その時にお金はない、でも何かを表現したいという状況で作られたのがマンガなんですよね。
予算がないから映画までは作れないけど、自分の中の物語、社会に対して言いたいことを自由に描けるのがマンガであり、(その文化が)昔の貸し本屋から始まったのです。
そこに手塚治虫さんみたいな才能ある人が出て、そこでみんな自由に思いっきり好きな世界を描いていくようになったんですよ。
中にはPTAから批判を受けるものも多く、少年漫画誌は捨てろといった風潮もありましたが。
例えばその(タブーがないという)流れの中で生まれたのが、少女的な作品です。
ヨーロッパ人とかアメリカ人からみたら目の周りにアイライン引いてるとか、髪を染めてるとか、そういう表現において日本は本当に自由なんですよね。
自由な場にはたくさんの表現者が生まれたり、集まってくるものなんですよ。
絵を上手くなりたい人はパリに行く人が多いですが、その理由はパリが自由だからなんです。
日本の東京にも自由な雰囲気があるんですよ。
若い女の子がすごい格好で歩くことができる、これは他の国では考えられない事ですよ。ヨーロッパでは髪赤く染めてたら狂人扱いされるんですから。


―デジタルハリウッドはサブカルチャーを意識してるんですか?

私達はサブカルチャーを、『サブ』だとは思ってないです。
メインカルチャーとは言いませんが、マンガやアニメ、ゲームはサブカルチャーとまとめられるほどマイナーではないと思っていますね。
デジタルハリウッド大学には、小さい時から身近にあった物を理解して表現者になっていこうとしている学生が多いこともあり、映画なども含めて意識はしています。
ですが、その表現力を必ずしもその分野で使わなくても良いとも思っています。
確かに映画を学んで映画制作会社に行くのも一つなんですが、映像で物を表現するという能力は、必ずしも映画業界だけが必要としている事ではないんです。

―それは産業のこだわりが特にないという事ですか?

ないですね。むしろ広くあって欲しいです。
物を作れる・発想できるなどのクリエイティブ力以外に、現状を変えるパワーはないと思いますから。
例えばある技術を開発しても、半年で他の国にキャッチアップされてしまう。
技術で会社を保つ事はできないから、そこにクリエイティブ力が必要になってくるのです。

―日本のクリエイティブ力は、世界から見て高いのでしょうか?

産業界からの評価は低いんですが、確実にその力を持っています。こんなに良い文化の中で育っていて、持っていないはずがないです。
若い人だけではなく、戦後を謳歌した世代だってそうですよ。画一的な教育を受けさせられてるからクリエイティブ力なんて持っていないというような話を聞いた事があるんですけど、その理由はそれを表に出してはいけないと教わってるからです。

―表に出さないだけで、質としてはすべての人が持っているわけですか?

もちろん持ってますよ。
学校では、他の人と同じで色々と教えられるわけじゃないですか。だから本来は持っているのに、隠すしかないんですよね。違う面を出すといじめられるからです。
大学生の中にも、過去にいじめられてきた子がいると思うんですよ。
ですが、デジタルハリウッド大学に来ると、誰も(他人と違うことを理由にして)いじめないですよね。いじめるどころか、格好良いと思われますよ。クリエイティブ力があって。
デジタルハリウッド大学は、そのクリエイティブ力で世界を変えるための起爆剤となる学校になっていって欲しいと望んでいます。












                                    (取材:井上、飯田)


Posted by リーダーズリポーター at 11:28│Comments(0)TrackBack(0)

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